研究概要 |
弥生時代に流通したカリシリカガラスには,Cuイオンによって着色された青色のガラスがある.着色に使用した銅に関して,PbO,SnOが検出されることから青銅などの合金が使用された可能性がある.約300点におよぶ資料を分析した結果,Cu:Pb:Snの含有量比はほぼ5:3:2の比を示し,当時の一般的な青銅の組成には合わない.いっぽう,これらの鉛同位体比を測定したところ,日本産の鉛鉱石ではなく,中国産の鉛鉱石の可能性が大きい.今後,詳細な検討も必要と考えられた.いっぽうで,研究を続けてゆくなかで,従来にはない新しい知見が多く発見された.その一つに,カリウムガラスから勾玉や管玉が新たに発見され,また,それらはラジオグラフィーやX_CTにより明らかに穿孔されていることが判明し,当時におけるガラスの加工方法の再検討が必要となった.また,鉛シリカガラスについては,従来から古墳時代の前半には日本で鉛シリカガラスは発見されていないが,北部九州では,5世紀頃には鉛シリカガラスが流通している可能性も出てきた.これは,韓国において,5世紀頃には朝鮮半島で鉛珪酸塩ガラスが製造されたことが,最近の調査で明らかにされており,これらの鉛シリカガラスの流通の可能性が考えられ,今後の課題となる.
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