金属遺物中に残存する可溶性塩類の除去について、新しい脱塩処理システムを構築しながら、実際の金属遺物の脱塩処理を実施した。 脱塩処理の評価方法として、イオンクロマトグラフを用いて金属遺物から溶出した可溶性塩類を定量化する方法を確立した。また、蛍光X線分析装置による実際の遺物の元素マッピングによって金属遺物に侵入した塩類の分布を測定した。 金属の溶液中における腐蝕は、金属原子のイオン化反応速度と酸素などの溶液中の物質の還元反応速度(カソード反応)との組み合わせとして理解できるので、主にカソード反応を抑制することを目的として、脱酸素状態の高温水や腐食抑制剤を用いて錆を抑制し、効率的に金属遺物に含まれる可溶性の塩類を除去する方法を開発し、多くの出土遺物に適用し実用化を進めた。 多くの遺物にこの脱塩方法を適用した結果、遺物の埋蔵環境の違いと遺物の崩壊に関する多くの知見を得た。また、これまで注目されていた塩化物以外にも硫化物が遺物に与える影響についても検討した。その結果、これまでに開発した脱塩方法が硫化物の除去に最も効果のあることが判明した。
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