本研究では、Bonhoeffer-van der Pol(BVP)型方程式で表現される反応拡散系における時空間パターンの研究を行った。この研究はパルス衝突の計算機シミュレーションで偶然発見した奇妙な振る舞いが動機になっている。すなわち、パルスは衝突によって消滅せず、むしろ、持続的にパルスを放射する核を形成する。この事実は、散逸系のパルスは衝突によって消え去るというこれまで信じられてきた常識を覆えすものである。私たちはこの現象を自己組織的パルス波生成と名付けた。BVP型方程式は20年以上研究されてきたが、上のような性質は今までに知られていないまったく新しいものである。 本研究で次のようなことが明らかになった。系がもつ双安定性、すなわち、一様な平衡解とリミットサイクル解の共存がその原因の一つである。さらに、BVP方程式がもともと持っている興奮性と双安定性とのバランスで多彩な時空間パターンが現われる。振動性のパラメータと興奮性の指標のひとつである抑制因子の拡散定数を変えて時空間パターンの相図を作った。自己組織的パルス波生成は空間2次元ではターゲットパターンの自発的形成となる。抑制因子の拡散定数を大きくしていくと、拡がったターゲットパターンから、局在したターゲットパターンへ、さらには、動かないターゲットパターンへの変化が見られる。 関連する研究として、1-活性因子、2-抑制因子からなる3変数BVP型方程式における局在ドメインの運動と相互作用の研究を行なった。ドメインの脈動、横揺れ、カオス的運動などを計算機シミュレーションと界面ダイナミクスによる理論で解析し、3変数系では、脈動に比べて横揺れ運動が起こりやすいことを明らかにした。
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