成長する表面または界面が、滑らかでなく荒れた粗な形状を示すことが自然界や工学過程において良く観察される。それらが異方的なフラクタルである自己・アフィン性という共通の数理科学的構造を有していることに興味がある。成長する荒れた表面においては、表面の乱れがべき乗の法則にしたがって増大する。表面の自己・アフィン性を特定するフラクタル次元と共に、この動的指数を求めることが、この研究の目的になる。計算機シミュレーションの方法による研究が先行していたが、カーダーなど3人組が表面の運動を記述する確率的非線形偏微分方程式(KPZ方程式)を提案して以来、繰り込み群の方法など理論的な研究の成果が蓄積されてきた。しかし、単純な方程式にもかかわらず、KPZ方程式は手ごわく多くの理論家の挑戦を退けている。われわれはKPZ方程式の確率変数の取扱いに誤りがあることを指摘し、線形な確率的拡散方程式を数値的に解く場合にもこの問題が存在することを厳密に示した。確率的な偏微分方程式の数値解析に重要な問題を提起したことになる。 一方理論的興味とは別に、KPZ方程式から導かれる指数は多くの実験結果と一致しないことが指摘されて久しい。最も有望な提案は、ランダムノイズが空間内の位置に依存する確率的非線形偏微分(KPZQ)方程式である。前述した2種類の指数を空間次元の関数として表す一般公式を以前より確かな方法で導出した。 さらに、成長するランダム図形一般に研究対象を拡張して、拡散に支配された凝集体(DLA)のマルチ・フラクタル次元を理論的に求め、自己組織化臨界性を示す砂山モデルの普遍性について議論した。
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