一般に数Torr程度のDCグロー放電陽光柱には、電離に伴う不安定性(電離波動)が自励する。この波動は光の脈動を伴っているため検出が簡単である。また、この不安定性はプラズマパラメータ(気圧P、放電電流Id)等によって制御可能である。波動の周波数は特徴的な周波数のまわりに分布しており、最近のカオスの実験に好都合の材料を提供している。 本研究では内径3.0cm長さ49cmのガラス製の放電管と製作し、He気体を用いてDC-グロー放電陽光性で発生する電離不安定性について実験を行った。P及びIdを制御すると低周波の電離不安定性が励振される。P=1.37torrとしてIdを増加するとき、まず数kHz正弦波の自動振動が生じる。Idの増加に伴って正弦波は歪みを生じ第2高長波を含む、更にIdとともに4周期の分岐を生じついにはある周波数スペクトルの広がりをもつカオス状態へ入る。逆にIdを減少するとき、上記の現象はヒステリシスをもつ。これらは振動が単一周期から多周期へ分岐を伴って起こる典型的なカオス状態となっている。 Pを他の値に保つとIdに伴って同様な変化が起こる。このときPが高い程、1周期よりカオス状態へ変化が早い。 次に、Idの変化に伴ってアトラクターの次元がどの様に変化するかを求めた。信号の相関積分から得られる次元は、カオス状態でも自由度は4〜5程度となっていることはすでに報告した。本実験では、更に進めて、Idの変化に伴う各振動状態ごとにリアプノフ数を求めた。その結果、周期的振動状態ではリアプノフ数の負の値となり、カオス状態では正の数となった。これらの実験事実は定常グロー放電陽光柱に発生する。電離不安定性が典型的なカオス状態を作りだしていることを示している。 今後、更に実験を進めヒステリシス現象の解明、外部から強制振動を加えたときの不安定性を表すアートルドトング図の作成等について実験を進める予定である。
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