科研費によりX端末を購入できたので、九大大型機センターおよび九工大のセンターを使用する環境がたいへん良くなった。仕事においては、相乗確率的ノイズにたいする数値計算は科研費の決定の段階でほとんど終わっていたので、かねての念願であった電子回路における研究を行った。これは、相乗確率的ノイズの研究の出発点でもある。具体的には、結合系を電子回路により実現し、大自由度カオスを調べるのが目的である。相乗確率的ノイズはノイズ発生器によって生成できる。このため、Chua回路を基本ユニットとして、それらを可変抵抗で結合することにより結合系を構成する。このChua回路は外部電圧を含めた系のパラメーターを変化させることにより、その状態を周期的にもカオス的にも容易に変えることができ便利である。結合抵抗および外部電圧を与えることにより、まず相図を作成した。これらの研究はすべて実回路と数値計算を併せて実行している。この周期状態の中には非結合のときにはカオスであるが結合によって周期状態になっているものがある。この状態は外部ノイズを研究する際にも重要になる。そのため、まずこの周期状態を調べた。この状態においては、周期状態のアトラクターといわゆるカオス的サドルが共存している。任意の初期条件から出発すると系は過渡的カオス状態を示し、最終的には周期的アトラクターに落ち込む。この落ち込み時間を測定すると、それは指数的分布をしている。現在、基本ユニットが3および6個のときは完成しており、現在投稿準備中である。指数分布からのずれはユニットの個数を増やすことによって得られると最初は期待したがそうではないことがはっきりした。今後は、結合の仕方を変えることにより、この分布を調べるとともに、外部ノイズの効果を研究する予定である。
|