発癌、乾癬、関節リウマチ、増殖性糖尿病性網膜症などで反応性の高い活性酵素が生成されることが報告されている。その活性酵素や低酵素によるストレスが血管新生を誘導するメカニズムについて検討した。特に血管内皮細胞は虚血や酸化ストレスなどの外界のストレスに常にさらされている。これらのストレスに非常に敏感に反応し、誘導されるVEGFやIL-8における血管新生誘導の分子機序について調べた。その結果、 (1)血管内皮増殖因子VEGF:ヒトグリオーマ細胞株8株を検討した結果VEGFの発現レベルと転写因子SP-1やAP-1の発現レベルが全く一致していることを観察した。又VEGF、TNF-αによるVEGFの誘導とSP-1発現、又虚血によるVEGFの誘導とAP-1発現が相関していることが見い出された。従ってVEGF発現誘導には転写レベルの機序が働いていることが示唆された。 (2)インターロイキンIL-8:IL-8には炎症の重要なメディエーターであると同時に、血管新生への関与が報告されている。グリオーマや悪性黒色腫、胃癌、肺癌等多くの癌細胞において、IL-8が発現されている。それで我々は(a)ヒトグリオーマ細胞株とヒト微小血管内皮細胞との共培養の系でグリオーマによる血管内皮細胞の管腔形成が如何なる因子によって制御されているかを検討した。現在までにVEGFやbFGFの他に、IL-8の中和抗体でも、血管内皮細胞の管腔形成が制御されていることが分かった。(b)過酸化水素や外界ストレスにおける、血管新生の誘導には各々の血管新生因子や転写因子が直接関与しているかを調べた。過酸化水素刺激によって、NFκBの核内への移動と活性化が起こり、IL-8転写を亢進しこのIL-8によって血管新生が誘導される。NFκBのアンチセンスオリゴによって過酸化水素依存性のIL-8産生が阻害されることにより、血管新生の阻害へと至った。このようにIL-8発現誘導にも転写レベルの機序が働いている。
|