研究概要 |
チロシンキナーゼ阻害物質であるハービマイシンは血管新生を阻害するが、その阻害作用に関与する分子内官能基を突き止めた(Biol.Pharm.Bull.,1994)。またチロシンキナーゼ阻害作用を有するラディシコールとその誘導体などによる血管新生阻害作用の一部を細胞生物学的に明らかにした。さらに3種類のPDGF(血小板由来増殖因子)isoformsがいずれもin vivoで血管新生を誘導することを見い出した(Biol.Pharm.Bull.,1994)。PDGFの膜レセプターは機能的チロシンキナーゼを含むことが知られている。これらの知見を総合的に考えると、ある種のチロシンキナーゼが血管新生機構において本質的な役割を演じていることが強く示唆された。またチロシンキナーゼ阻害活性は血管新生阻害物質を探索する際の重要な指標になる可能性が示された。 鶏卵漿尿膜法を用いて見い出した血管新生阻害物質、ラディシコールが血管新生病の一つである癌に対し治療効果を示すかを検討した。ラディシコールは自家癌と移植癌に対し抗腫瘍作用も腫瘍血管新生阻害作用も示さなかった。一方、ジパルミトイール化した誘導体がこれらの腫瘍の増殖をほぼ完全に抑制し、また顕著な延命効果を発揮することを突き止めた。さらにこの誘導体は、これらの腫瘍が誘導する血管新生を抑制した結果、抗腫瘍作用を発揮することを示唆する事実を今年度新たに導入・確立したmouse dorsal air sac法を駆使して掴むことに成功した(Nature,in preparation)。また新しい血管新生阻害物質を数種類見い出しつつある。
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