平成6年度においては、現行著作権制度における基本概念の成立、展開の状況を明らかにすることを試み、なかでも、著作権制度の保護対象であり最重要概念である著作物について、大陸法系の法とアメリカ合衆国法との比較検討を行った結果、歴史的に両法系間に著作権保護対象に関して大きな差異が存在し、右の点に関する基本的認識が国際的調和の議論において必須であることが明らかとなった。 さらに、現在アメリカを中心に検討が行われている所謂情報スーパーハイウェイ構想について検討することにより、放送を独立の利用行為として規定していないこと等アメリカ著作権制度の特色が明らかになった。情報インフラストラクチャと知的所有権の問題についても、著作者の人格権、著作権の集中管理等について国際的に諸提案がなされているが、本年度においては、各国における検討の現状を概観すると共に、各国提案の背景をなしている沿革的、制度的要因の抽出に努めた。 くわえて、並行輸入の著作権による規律についてアメリカ、EU諸国、及び日本の現状を比較検討した結果、従来国際的用尽の名の下に論じられてきた問題が、各国毎にその内容を異にすること、依然として各国において同法理の適用について定説を見ていないことが明らかとなった。
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