治水、利水から見た低平地都市での総合水管理システムを確立するために、佐賀低平地の水路網を対象に、流れのモデル化と治水機能、地下調整池の評価、治水・利水からみた水対策の費用便益評価に関する基礎的研究を行った。 佐賀市街部水路網に対して不定流モデルを適用し、モデル降雨、実績降雨から現在の内水排除能力と計画降雨に対する必要な水路網整備の諸元値等について検討を加え、都市開発と共に、集水面積と流出係数が増大しているが、歴史的に形成されてきた現在の水路網でもその運用法によっては内水を安全に排除できることを明らかにした。 雨水流出水の水質調査と降雨記録の分析から、防災調整池の運用法について検討し、本来の浸水対策の目的以外に、小降雨期(10〜3月)に雨水や下水処理水を浄化用水や防火用水として貯留したり、質対策に利用し非特定汚濁源からの負荷削減に寄与するなどの有効利用が可能であり、またそれが低平地の水環境改善に有用なことを示した。 オランダで開発された水・利水政策の費用便益評価手法を佐賀低平地をケースフィールドとして適用して、既存水路の改修による排水能力の改善と浄化用水の導入が実施可能性も高く有望であることなどを指摘した。 以上の各検討を基に、低平地都市では防災(治水)、利水、親水(水環境)を個別に取り扱うのではなく、総合的観点から有機的・複合的な対策が必要であり、また、可能であることを指摘した。
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