高濃度の油分が流入する排水処理施設では油分による様々な弊害が生じるが、特に活性汚泥等の生物処理に与える影響が大きいことが報告されている。本研究は、活性汚泥等水処理生物に対する油分の影響を調べ、その阻害因子について探るとともに、油分除去に効果があるとされる界面活性剤のサポニンを添加して、その効果を見るとともに、サポニン添加による油分の除去機構について、動力学的解析と油分成分の変成機構について明らかにすることを目的として各種の基礎実験を試みた。本研究で得られた知見は以下の通りである。 (1)標準活性汚泥装置を用いた含油排水処理実験では、サポニンを添加しない場合では油分が活性汚泥処理を阻害することがあらためて示された。特に、バルキング現象や酸素供給能力の低下が顕著に現れた。それに反し、活性汚泥に微生物活性助剤であるサポニンを添加することは活性汚泥の油分除去能を大幅に高めることができた。その原因としては、サポニンによる油分の乳化作用、気泡表面の油膜生成防除あるいは活性汚泥そのものの吸着、貯蔵、酸化作用の促進などが考えられる。 (2)膜分離による活性汚泥装置を用いて油分分解に優れた微生物が培養できるかを検討したが、サポニン添加を継続することにより通常の活性汚泥から十分油分を分解し得る微生物が多数出現することが判明した。今後の検討課題として微生物種の同定とともに微生物の保存方法も考慮していく必要がある。
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