セメントの水和による早強性発現のために二酸化炭素を添加し吹き付け工法により実験を実施した。本年は3年目の研究であるが、基礎的事項で解明すべき点が多いのでそれらについて実施した。実験要素としては、セメントの種類(普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱、低発熱)、吹き付け用気体中の二酸化炭素組成率(0、20、40、60、80、100%)、養生期間(0.5、1、2、3、6時間)を変えて貫入試験により強度を測定した。なお、セメントと粗骨材比は1:1.5であり含水比はセメントにより異なるので予備試験により調整した。供試体は160×135×40mmの型枠に吹き付け、20゚Cで養生した。実験結果はセメントにより異なるが養生3時間以降、急速に強度が増加し、二酸化炭素組成率で40〜60%がよい効果を示した。60%以上になるとPHが低下し強度も少し減少した。水セメント比が高くなると反応による温度上昇を妨げ、早強性の発現は望めない状況であった。セメントの主要結晶成分であるアリット、ベリットに着目すると、早強性に貢献度の高いものはアリットであった。また、水和した固結体をX線解析すると、セメントと二酸化炭素の反応の際に発生すると思われた炭酸石灰は見られず、塩酸の添加による二酸化炭素の分析では多量の二酸化炭素が配合、時間の変化により検出されたので、実験で発生した炭酸石灰は無定形であると判断された。以上の知見により研究が大幅に進展し、セメントに二酸化炭素の添加が非常に有効であることが判明した。
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