セメント吹き付け工法における早強性の効果を大きくするために、平成6年度の研究は、吹き付けモルタルの水セメント比を最小にした流動性の少ない配合で実験を実施したが、流速が少なかった。そのため能率が悪く供試体を作成するのに長時間を要し、層厚の吹き付けは困難であり、吹き付け終了時には、極端な場合初期の吹き付け部は硬化しており、不均一な吹き付け状態になった。そこで、平成7年度はトンネルの吹き付け現場を見学し、その作業要領により検討し、水セメント比を高くして実施したところ流速が大になり吹き付け厚20cmも可能となった。また、吹き付け要素について、吹き付け気体中の二酸化炭素の濃度を0%、20%、50%、100%、養生温度を10°C、20°C、セメントの練り混ぜ水の温度を10°C、80°Cと変えて実施し、供試体を作成し、一軸圧縮強度を測定した。また、実験中の諸状態については、ポ-タブル赤外線二酸化炭素測定器により測定した。平成8年度の実験要素としては、セメントの種類、二酸化炭素組成率、養生期間を変えて貫入試験により強度を測定した。実験結果は養生3時間以降、急速に強度が増加し、二酸化炭素組成率で40%〜60%がよい結果を示した。セメントの主要結晶成分はアリットであった。また、固結体をX線回折すると、炭酸石灰は見られず、固結体の化学分析では二酸化炭素が検出されたので、実験で発生した炭酸石灰は無定形であると判断された。以上の知見により研究が大幅に進展し、セメントに二酸化炭素の添加が非常に有効であることが判明した。
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