研究概要 |
Chrysochromulina属について,昨年度に引き続いてさらに解析を進め,本属の食作用が次のいくつかの様式に区別できることを明らかにした。1)Chrysochromulina aff. brevifilumにみられるタイプ:細胞後端からtubu-like structureと名づけたラッパ形状の細胞質が生じ,大きく開いた先端にえさ粒子が付着する。えさ粒子はこの構造の中を通って細胞後端にある食胞に運ばれる。2)Chrysochromulina asteroplastidaにみられるタイプ:この種もC. aff. brevifilumと同様にtubu-like structureを形成するが,それが生じる位置は細胞後端に限らず,先端部および側部にも形成される。しかも複数のtubu-like structureが一度に形成されることもある。えさ粒子は同様にチューブの中を通って細胞内に取り込まれるが,先端や側方のそれで捕獲されたえさ粒子は細胞内を後端に運ばれ,最終的に食胞にとらえられる。3)Chrysochromulina strobilusにみられるタイプ:この種は細胞後端近くから粘液質の突起を長く伸ばす。えさ粒子はこの粘液質によって捕獲され,やがて粘液質が細胞にたぐり寄せられることによって,細胞内に取り込まれる。 われわれは,これまでに,Chrysochromulina hirtaとChrysochromulina spiniferaにおいて,えさ粒子の捕獲と食胞への運搬にハプトネマが関与するタイプの食作用の存在を明らかにしてきたが,今回の研究によって,Chrysochromulinaの多くの種はハプトネマを使用しない単純な様式で食作用を行っていることが明らかになった。これらに較べると,C. hirtaとC. spiniferaのハプトネマや鱗片が関与する食作用は極めて複雑な現象であり,膜上の粒子の移動やセメント物質の分泌など、他の細胞機能が加わることで実現していると考えられる。このことから,ハプトネマの関与しない食作用は属内において原始的なものである可能性が示唆される。
|