研究概要 |
1)開発した多層採集システムを用いて水深1000mの相模湾で近底相(底から0.5-3m)に生息するプランクトン群集の生態を調査した。生物量は1000m^3あたり4.0-43.3gで表層プランクトン生物量の約15%であり,中・深層に比べると高い傾向が認められた。 2)11種の中・深層性カイアシ類の化学組成(炭素量/窒素量の比)を調査した結果,発育に伴う鉛直移動を行ない9種では炭素量/窒素量の比率は水域、季節を問わずほぼ一定で大きな差異は認められなかったが,これに対しいて発育に伴い深層に下降するNeocalanus cristatusのような種ではこの比率は深くなるに従って減少した。さらに卵嚢を持つ肉食性のEuchaeta.Paraeuchaetaでは炭素量が多かった。 3)走査型電子顕微鏡を用いた観察では中・深層種の消化管内から動物プランクトンに混じり,表層に生息する動物プランクトンが排泄した糞粒に由来すると思われる多くの藻類の破片,植物プランクトンの塊、囲食膜が検出された。 4)相模湾から採集された魚類マイクロネクトン5種,浮遊性エビ類3種について化学的手法で食性を調べる目的で,窒素同位体(^<15>N)を計測した。窒素同位体比は9.4-14.2%で,卓越種ヨコエソ(Gonostoma gracile)では成長に伴い窒素同位体比は増加し、雄から雌への性転換の時期に値が大きく変わり,雌は雄と異なる餌を食べていることが示唆された。
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