前年度の研究でマボヤ生殖巣発達期の精巣より卵と精子の結合に関わる精子側の因子と考えられているフコシダーゼcDNAをクローン化した。このクローンをβ-ガラクトシダーゼを用いた発現ベクターと連結したのち大腸菌内でβ-ガラクトシダーゼとの融合蛋白質として発現させ、精製したこの蛋白質をウサギに注射し、ポリクローナル抗体を作成した。今年度は得られたフコンダーゼcDNAが本当に卵と精子の結合に関係するか否かを調べることを中心に研究を行った。まずこの抗体を用いて精子蛋白質に対してウェスタンブロットを行った。その結果、この抗体は分子量33kDaの蛋白質と交叉し、精子蛋白質をゲル濾過した場合の活性画分の分子量(30kDa)とよく一致している。また、この抗体を用いて、受精に関してバイオアッセイを行った。マボヤ精子フコシダーゼの抗体で精子を処理した後、卵と遭遇させて、一定時間後卵と結合していない精子を殺し、除去した。その後、受精膜上昇により受精率を測定した。その結果、フコシダーゼの抗体では受精は60-90%阻害され、抗体の濃度依存的に阻害効果が変化した。一方、免疫前の血清では受精はほとんど阻害されなかった。このことからこの研究で得られたフコシダーゼcDNAはマボヤ卵-精子の結合に関わる精子側の因子である可能性が大変高いと考えられる。
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