本年度の当該研究により、以下7つの知見が得られたので報告する。 1.五島列島の3島における11地点および長崎港でカイヤドリヒドラ類の分布調査を初めて実施した。その結果、全地点でこの類を収集でき、かつある種の二枚貝に強い宿主選択性を示すデータが得られた。一方、これらの地点でのプランクトン採集により、いくつかの地点では、この類のクラゲが初めて採集でき、これまでのプランクトンサンプルからのこの類の出現がほとんどなかった知見を塗り替えるデータが得られた。 2.対馬で2種のカイヤドリヒドラ類の宿主選択性が明瞭に異なることが認められるデータが得られた。 3.上記の地点および和歌山県白浜産の材料を用いた実験室飼育により、2種のspawning timeがまったく異なることが判明した。 4.3産地の材料において種間交配が実験的操作で可能となった組合せが認められた。 5.白浜産の種では、宿主二枚貝から成体のクラゲが遊離する時刻が一定であることが判明し、環境条件および宿主の生活リズムとの関連を解析した結果を現在、欧文原著論文として投稿中である。 6.伊豆諸島3島でこの類の分布調査を初めて実施した結果、ポリプもクラゲも分布が認められなかった。これに対して、同時期に行なった伊豆半島の1地点でのこの類の分布調査では、これまでどうり分布が確認されたことから、両地域での明らかな分布差があった。 7.白浜産のカイヤドリヒドラクラゲの生殖時期が解明でき、それは半年以上の長期にわたることが認められた。また、宿主ムラサキガイへの共生率が世界一高い場所であることが判明した。さらに、別属他種コノハクラゲとは異なり、この宿主の幼貝への共生率が著しく高いことが判明した。さらにはイタリア産の同属別種とも同様の相違が認められた。これらの結果は、欧文原著論文として公表報告した。
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