研究概要 |
1.マダイ稚魚期の水温と鱗隆起線の関係 水温がマダイ稚魚の鱗隆起線の形成に及ぼす影響を飼育実験と中間育成中の稚魚および天然海域で漁獲された稚魚によって比較検討した. 飼育実験は,ふ化後119日の稚魚を17,20,23,26,29℃の水温区に15尾づつ収容し,配合飼料を一日3回与えて9日間飼育した.飼育前後に麻酔下で胸鰭付近の隣を採取し,隆起線の本数を計数した.中間育成中の稚魚を10日前後の間隔で数回サンプリングを行い,それぞれの鱗の隆起線の本数と鱗の中心から頭部方向の被覆部縁辺までの距離(鱗径)を計測した京都府および長崎県下で漁獲された稚魚の鱗の隆起線数と鱗径を計測した. 鱗に形成される隆起線の一日当たりの本数は飼育水温ともに増加し,その結果は上に凸な放物線で回帰することができた.また,飼育実験の結果は,設定された水温における上限を示していると考えられ,中間育成および天然海域での結果は殆どその曲線の下側の近傍を示した. 2.マダイ稚魚の飼育水温と耳石中のSr/Caの関係 マダイ稚魚の耳石中のSr/Caと水温との関係を飼育実験で求めた. 飼育実験はふ化後64日の稚魚とふ化後119日の稚魚を用いて2回行った.水温条件は前述のとおりであった.耳石(扁平石)を超音波洗浄した後,表面をPIXEで分析した. ふ化後64日の稚魚については水温が高いほどSr/Caが大きくなったが,ふ化後119日の稚魚ではSr/Caはほぼ一定の値を示した.このことから,マダイ稚魚の飼育水温と耳石中のSr/Caとの関係は,稚魚の成長段階によって異なる可能性が示唆された. 3.アサリ貝殻の成長線形成要因 アサリの貝殻の成長線は潮汐に伴う干出によって生じており,一方,潮汐周期は理論的に計算できる.しかし,実際の海面の上下動は,セイシュや低気圧の通過の影響を受ける.舞鶴湾での実験の結果,成長線には潮汐周期に加えてセイシュ,低気圧および水温の影響が刻まれている可能性が示唆された.また,成長線の画像解析から,貝殻の成長速度等の情報が得られる可能性を見いだした.
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