1.本研究は、瞬目反射とその先行刺激による抑制効果の現象を、人間の情報処理過程を検討するプローブ刺激指標として用い、これによって感情と認知の関連を探究する新たな方法を開発することを目的とした。 2.実験I.では言語を先行刺激とした場合の瞬目反射の抑制について検討した。言語の意味にかかわらず、これを反射誘発音声刺激(100dBの純音)より100〜300ms前に呈示すると瞬目反射量は約半分に抑制されることが明らかになった。1s以上前の呈示では抑制効果はみられなかった。 3.実験II.では、被験者をあらかじめ快あるいは不快の感情状態に誘導した上で、快及び不快の意味を持つ単語を先行刺激として用い、瞬目反射の抑制効果を検討した。快感情の状態では、快単語呈示の場合に抑制が大きかった。これは単語認知時に快単語により注意が向けられたことを示している。いわゆる感情一致効果がみられた。一方不快感情状態では快単語、不快単語の間に抑制効果に差はみられなかった。 4.瞬目反射は頑健で安定した現象であり、言語を先行刺激とした場合にも頑健な抑制効果がえられた。よってこの方法は認知過程の研究において有望な指標となりうると思われる。しかし、個人差の大きさ、順化過程の検討など残された問題も多い。今後、基礎的研究をさらに行う必要がある。
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