研究計画に従い、ロドプシンと結合する細胞骨格タンパク質の同定を行った。スルメイカの視細胞の微絨毛膜内には、アクチンが存在する。可溶化した微絨毛に含まれるアクチンをファロイジンで沈殿させるときロドプシンが共沈殿する現象が確認された。これは、ロドプシンとアクチンの間に相互作用が存在することを示唆する。試料への光照射により、この相互作用に影響が認められた。この成果を第65回日本動物学会において、″スルメイカ・ロドプシンと細胞骨格蛋白質の相互作用″の題で発表した。アクチンとロドプシンの抗体を用いて、それぞれの蛋白質を同定した。アクチンに結合するロドプシン量は、アクチン量の1/10以下である。ロドプシンのアクチンへの結合比率は、非常に低い。しかし、光照射を受けた場合に差が認められることから、両タンパク質の相互作用は、生理作用に関係すると考えられる。アクチンとヴィンキュリンの関係に認められるような結合の調節が行われている可能性も高い。アクチンとロドプシンの結合が直接であるかどうかを解析するために、再構成系の実験を行った。外套膜の筋肉よりアクチンを精製した。筋肉のアクチンは、視細胞内のアクチンとフィラメントを形成した。精製した筋肉アクチンとロドプシンとの間には、相互作用が認められなかった。再構成系では、アクチンとロドプシンの間を介在する因子が欠けている可能性がある。さらに視細胞のアクチンの精製や、視細胞の祖精製成分をこの再構成系に加えて研究を進めてゆく予定である。 一般に、SH3領域を持つ蛋白質とアクチンとの関連は、示唆されている。ロドプシンとアクチンの相互作用は、SH3領域が関係した蛋白質間の相互作用を解析するのに有望な実験系であると考えられる。
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