研究概要 |
金属材料中の高速非平衡現象として、液体からの超急冷によるアモルファス合金の生成過程、ならびに,超高速変形時の金属間化合物の粒界破壊に関する分子動力学シミュレーションを行った.電子状態に起因した金属特有の諸性質を簡便かつ効果的にシミュレーションに反映させるために,原子間相互作用の記述方法として汎関数多体ポテンシャルを用いた.アモルファス合金の分子動力学計算は,実験的にも液体急冷法によりアモルファス合金が作成されているZr_<67>Ni_<33>合金について行った.超急冷過程における,原子の低エネルギー運動たる拡散としての緩和現象の解析として,van Hove相関関数ならびに中間散乱因子を計算した.過冷却液体とアモルファス状態とでは,長距離相関におけるvan Hove相関関数の挙動は異なる.中間散乱因子は融点以下では二段階の減衰を示し,それはデバイ型ならびに引き伸ばされた指数関数の和として近似できる.また,統計力学的方法では埋没してしまう情報を抽出するために,個々の原子の運動の軌跡の解析を行い,アモルファス状態においても,一部の原子では,ジャンプモーションや緩慢な並進運動などの比較的大きな変位が生じていることを明らかにした.一方,超高速一軸引張を受けるNi_3Al金属間化合物の粒界破壊の分子動力学計算においては,二つの無限平衡平板としてのΣ粒界を結晶中に導入した.粒界に欠陥や不純物を含まない場合には,粒界破断の前に結晶内において局所変形が生じる.さらに,結晶に歪を加えると粒界部分において破断を生じる.この時,破壊の進展は音速レベルで生じると共に,粒界部分の数原子層にわたる周期構造が破壊され,破面近傍の数原子層はランダムな構造を有していることを明らかにした.
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