研究概要 |
ジルコニウムシリサイドSi_3Zr_5は、高融点(2200℃)・低比重(6.0)を示し、次世代の超耐熱材料として有望である。しかし、原子の高い共有結合性が高融点を示す理由の一つとして考えられ、そのため延性は低いと予想される。研究代表者は、延性を向上させるには原子の金属結合性を高める必要があると考え、配位する原子数を増やすためZr原子の一部をY原子で置換した新三元系16H型シリサイドSi_3Y_3Zr_2を設計した。 理論的考察によりSi_3Y_3Zr_2は他の二元系16H型シリサイドに比べ特定の原子間における強固な結合がなく対称性が向上しているものと考えられる。また、融点2800K,比重5.26と推定されることからSi_3Y_3Zr_2はSi_3Zr_5よりも高融点・低比重で延性の優れた超耐熱材料として有望である。本研究では、Si_3Y_3Zr_2を作製し、結晶構造解析と融点,比重等の物理的特性および硬度,破壊靭性等の機械的特性の測定を行い、超耐熱材料としての可能性を探求することを目的とした。 Si_3Y_3Zr_2の作製は、通常の溶解法では各元素の融点の違いにより化学量論組成を維持することが困難であるため、原料粉末を化学量論的に混合し、円柱状にCIP成形した後、Ar雰囲気中で電気アークによって反応を励起させ試料を作製することにした。 粉末の混合はボールミルによって行ったが出発原料として入手可能なY粉末がSiやZr粉末に比べて大きいため反応が均一となり完全な単一相の作製には至らなかった。そのため現在粉砕エネルギの大きい装置での混合を行っている。 単一相に近い反応片を粉砕の後放電プラズマ焼結して得られたバルク材の硬度と比重を測定した結果Si_3Zr_5よりも硬度と比重が低くなっていることを確認した。 以上の得られた知見を基に論文を投稿準備中である。
|