| 研究概要 |
河川環境を考慮した自然石を用いた砂防構造物をつくるための基礎情報となる,自然渓流の巨礫群が作り出す河床の地形学・土砂水理学的特性に関する調査研究を行い,自然石を用いた砂防構造物が備えるべき諸要因について検討した.本研究では,優れた環境を持つ河川を,人工的改修を受けていない,自然河川の長所が生かされた河川であると考え,まず自然渓流において河川微地形の詳細な測量と,微地形に応じた河道内流速分布や河床土砂の粒径等の土砂水理学的特性の調査を行い,人工的な改修を受けた河川での調査結果と比較・検討を行った.その際,自然石やその組み合わせの複雑な形状が作り出す多様性を損なわないよう留意し,それらの多様性を数値化することを試みた.調査の結果として明らかになった地形学・土砂水理学的特性は,生態系や景観の保全などの河川環境の保全との関係から考察され,次のような結論を得た.
(1)今回検討対象としたような山地渓流では河川微地形はいわゆるステップ-プール系と呼ばれる階段状河床形態が支配していることがわかった.
(2)一つのステップ-プールが作り出す河道の縦断・平面形状の凹凸が,多様な流速場や優れた景観を作り出していることが明らかになった.
(3)環境に配慮した砂防構造物への応用例として,自然石の組合わせで作る,流れが集まって落ちるステップと拡幅を伴いながら流れを受けるプール部を備えた床固めを考え,その効果について検討した.
なお,計画していた室内実験による検討は十分な結果が得られず,さらに多くの調査事例を加えることとともに今後の課題としたい.
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