研究概要 |
レンゲ、ヘアリペッチといった豆科草種を前作とし、それらを代掻き時に鋤込み移植栽培する伝統的な有機稲作区と、不耕起のまま土壌表層に豆科植物の残渣を放置させた草生不耕起LISA区の無農薬・無化学肥料区、および除草剤を用いた慣行栽培区(病害虫は少発生で無防除)の3つの栽培条件における比較実験を合計40aの圃場で試みた。松山地方の記録的な水不足もあり一部の圃場で十分な水量が得られなかったが、レンゲとヘアリ-ペッチの耕起・不耕起区における収量は、レンゲ前作の伝統有機区と草生被覆区で483,484kg/10aで、ヘアリ-ペッチではそれぞれ560,539kg/10aとなり、耕起、不耕起の収量差は統計的に有為なものではなかったが、豆科草種間の差は約1俵認められた。各区の水稲生育パラメータ(草丈、葉身クロロフィル含量、茎数、地上部乾重)、約10日毎の病害虫・雑草発生量調査、土壌溶液と田面水とかんがい水の栄養塩分析用のサンプル採取を手法の開発検討も含め行った。また土壌は本田開始直後、栽培期間中一回、収穫直後の3回採取し保存した。栽培管理(とくに水管理)と採取作業に多大な労力を要したが、各項目の手法については今後の本格的な研究活動の進展に有意義な成果が得られた。とくに土壌溶液採集法に用いたポーラーカップ法は0.2μmマイクロポアフィルター濾過による規格化水分析手法との同一資料の窒素分析の結果有意差は認められず、従来より水試料の採集労力が大幅に解消された。現時点(2月末)ですべてのサンプルについて化学分析中のものもあるため、各区の生態系の構造の大枠しか把握できていないが、 (1)ヘアリ-ペッチはレンゲに比べて窒素含量が1.5倍でまた雑草量を抑制し緑肥として優れていること、(2)耕起より不耕起条件の方が無駄な栄養生長の抑制された効率のよい生産系であったこと、(3)イチモンジセセリなど害虫発生も少なかったが示された。これらの成果は本年度招待講演の決定しているオーストリーとオランダで開催される二つの国際学会で公表される予定である。
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