本年度は強皮症に特異的な抗RNA polymerase II(RNAPII)抗体の分子免疫学的性状を遺伝子工学的手法で追究した。 【方法】(1)免疫沈降法でRNAP IIサブユニットと反応した抗RNAP II抗体陽性強皮症15例を対象、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性筋炎(PM)、健常人の400例を対照とした。(2)cDNA^<CTD>をpGEX-2Tに組み換え、融合蛋白とし発現、同抗体との反応性を免疫ブロット法で調べた。(3)Adenovirus major late promoterによるRNAP IIに特異的なin vitro transcriptionの反応系に対象症例からの血清IgGを添加し、その抑制活性を調べた。(4)免疫沈降反応に18アミノ酸からなるCTD合成ペプチド{NH_2-(YSPTSPS)_2-YSPT-amide}を添加し、同抗体陽性症例間の反応様式を検討した。 【結果】(1)免疫ブロット法で精製220kDaサブユニットを認識した11例全例がCTD融合蛋白と反応した。一方、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎患者、健常人からの対照血清は同蛋白と反応しなかった。(2)抗RNAP II抗体陽性例血清IgGは、RNAP II特異的転写活性を抑制したが、対照血清IgGはしなかった。(3)11例中8例(5例で完全、3例で部分的)に免疫沈降反応の抑制が認められた。 【結語】RNAP II-220kDaサブユニットCTDを構成する反復配列が抗RNAP II抗体の主要抗原エピトープで、強皮症における自己免疫現象の標的として重要なことが示唆された。
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