本研究の目的は、肝・胆管細胞における主要組織適合抗原(MHC)class I抗原分子発現調節機構に与える胆汁酸の作用を解明し、肝・胆道素自己免疫疾患のの病態と胆汁酸の病因的治療的意義を明らかにすることである。その結果として (1)胆汁酸の1つであるケノデオキシコール酸(CDCA)は、肝細胞上のMHC class I抗原を時間・濃度依存性に発現を増加させた。 (2)同様に、mRNAレベルにおいても、CDCAは時間濃度依存性に誘導した。 (3)他の内因性胆汁酸もMHC class I mRNAを誘導し、その作用は胆汁酸のhydrophobicityの順であった。すなわち治療薬として使われているウルソデオキシコール酸(UDCA)は、最も作用が弱く、この点が治療薬としての作用機構の1つと考えられた。 (4)胆汁酸によるMHC class I mRNA発現作用は、protein kinase Cを介しており、胆汁酸自体により、転写因子AP-1が特異的に誘導されることをゲルシウトアッセイにより確認した。 以上、胆汁酸による肝細胞MHC class I発現はprotein kinase C、Ap-1を介して作用しており、胆汁酸の肝へのうっ滯はMHC面からも、自己免疫現象増悪を引き起こすと思われる。
|