麻疹ウイルス遺伝子をPCR法により検出するため、M蛋白コード遺伝子を増幅するように2対のプライマー(1対は他の1対の内側を増幅する)を作成した。この2対のプライマーをそれぞれ単独で使用した場合、検討した麻疹ウイルス標準株1株、麻疹ウイルス臨床分離株3株およびSSPEウイルス株2株のすべてを検出し得た。しかし、単独のプライマーによるPCR法では、その検出感度は感染性ウイルスとして、約100 TCID_<50>と低かった。2対のプライマーを用いたnested-PCR法を行ったところ感度は上昇し、ウイルス分離法の約1000倍となった。SSPE患者3名より脳脊髄液を採取し、その250μlより常法に従いRNAを抽出した。これを鋳型としてランダムヘキサマーを用いて逆転写酵素によりcDNAを作成した。nested-PCR法により麻疹ウイルス遺伝子検出を試みたところ、3例3検体中2検体で陽性であった。 本法は、SSPEの診断とともに、病期の進行・治療効果の判定にも応用できると期待される。さらに、これまでは分離されたウイルスを中心に遺伝子解析がなされてきたが、この増幅されたDNAの塩基配列を決定することにより、多数の分離困難な野外SSPEウイルス株について、遺伝子解析ができると考え検討中である。
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