遺伝子発現の変化がすべての生命現象を決定していると言っても過言ではない。 正常発生や分化、老化のみならず疾病病理についても同様である。そこでこの研究では皮膚疾患の一つである乾癬をモデルとし、遺伝子発現の変化を解析することにより、疾患関連遺伝子のクローニングを目標とする。解析に用いた方法は先頃Liangらにより発表されたdifferential dispray法を使った。 材料は5例の乾癬患者、2例の慢性湿疹の診断のために行われた皮膚生検標本の一部からと、3例の母斑細胞母斑などの切除により得られた正常皮膚から抽出したRNAを使用した。primerはGenHunter社のT12MNprimer setとAP primer setAを使用しRT-PCRを32P存在下で行った。6%ポリアクリルアミドゲルに泳動し、FujiXARフィルムに露光、乾癬患者に共通して変化の見られるバンドから再度PCRを行い、シークエンスを行った。シークエンスデータをGenbankやEMBLのdatabaseで検索した。現在までのところdatabaseに登録されていない3つのフラグメントがクローニングされた。 今後は他の皮膚炎症疾患のサンプルを増やし得られたものの乾癬特異性をより検証すること、cDNAを得ること、その構造解析、生物活性、乾癬病巣の中での発現分布等を解析する予定である。またこの方法の有用性が明らかになったことより、他疾患への適用も考慮したい。
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