実験動物(日本白色家兎)にGd-DTPA(MR用造影剤)を吸入させ肺野・気道系の描出・信号変化の有無を検討した。 1)家兎をネンブタールにて静脈麻酔を施し、造影剤を自発呼吸下にて吸入させたところ、十分量が肺野に到達せず、投与経路として気管切開をおくこととした。 2)造影剤の希釈濃度の検討では0.5、0.25、0.125M濃度の造影剤を超音波ネブライザーにて吸収させ、肺野のT1緩和時間を計測した。その結果では0.25、0.5M濃度の希釈にてT1値の短縮が得られた。しかしながら、画像的にはこの変化はごく軽度のび慢性の所見でしかなく、気道系の描出には至らなかった。 一方、造影剤の静脈投与にて肺野の緩和時間の変化を測定したところ、有為な変化はみられなかった。 3)肺野・気道内からのクリアランスに関しては肺間質から肺静脈を経ての吸収経路が想定され、腎臓の信号変化がその指標となるものと予想されたが、T1強調画像で腎臓の信号変化はみられず、クリアランスに関し今回は評価する方法を見いだせなかった。 肺野の造影剤による信号変化を得る方法としてはネブライザーによる吸入は有効な方法と考えられたが、気切孔を介した吸入でしか有為な所見が得られていない。通常の吸入では造影剤が鼻咽頭粘膜に付着するためと考えられた。しかしこれに対応して造影剤の吸入量を増やすことはその毒性の問題もあり実際的ではない。また今回検討した範囲内では気道系は描出できていないが、その原因の一つとしても造影剤の吸入量が少なかった可能性がある。今後は投与方法の再検討と、より低毒性の造影剤での検討が必要と考えられた。
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