(研究目的)バセドウ病発症のメカニズムは、自己免疫疾患として解釈されつつあるが、近年、環境因子つまりサイトカインやDNA binding proteinが関連している可能性も示唆されている。しかし、DNAレベルでの解析はまだ散見される程度である。本研究は、バセドウ病のもつ多様性の中でも、同一家系内での多発性に着目し、主に甲状腺刺激ホルモンレセプター(TSH-R)遺伝子の異常と自己免疫疾患関連遺伝子の家系内での遺伝形式を調べることにより、バセドウ病と遺伝との関連を解明することを目的とした。 (方法)バセドウ病が家族内にみられる計16家系を収集し、家系内のメンバーの血液からDNAを抽出し、保存した。本研究では、まずTSHレセプター遺伝子の異常の有無を調べた。TSHレセプター遺伝子は、染色体14番に位置し、アミノ酸配列も登録されている。この中から、患者に特有の遺伝子異常があるかどうかPCRを用いて、迅速に調査を進めた。 (結果)16家系38人のDNAから、PCRにより増幅されたTSHレセプター遺伝子には、欠損等の大きな構造異常は無いことが判明した。 (考察)TSHレセプター遺伝子の検索では現在までに異常は発見されていない。この検索を継続すると共にバセドウ病家系において、個々のDNAタイプが判明することにより、相同染色体を正確に判別できるようになると、バセドウ病の遺伝形式が解明でき、病気の発症がある程度予測できる可能性がある。
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