FGFは生体内に広く存在し、神経再生、腫瘍細胞増殖に関与していると報告されている。血管系においては血管新生作用、強力な血管拡張作用、血管内皮増殖作用、血管平滑筋増殖作用、血管壁栄養血管増加作用が認められているが、脳血管についての報告は少ない。また、脳血管外膜の知覚神経内にFGFの存在を認めたとの報告もあり、外膜側より脳血管のトーヌスを調節している可能性がある。本研究においては、まずラット(n=6)、イヌ(n=3)の脳底部主幹動脈におけるbFGFの分布を免疫組織科学を用いて検討したが、現在のところ外膜周囲神経内には有意の染色は得られていない。今後も各種抗体を用いて検討する予定である。次に、in vivoにおけるbFGFの脳血管拡張作用を検討するために正常犬(n=3)、およびクモ膜下出血イヌ(二回注入モデル)(n=3)の大槽内に0.1-1.0ugのbFGFを単回投与したところ、bFGFは容量依存性に正常脳底動脈を拡張させ、またクモ膜下出血7日目の攣縮脳底動脈をほぼクモ膜下出血以前のレベルまで拡張させた。この拡張効果は数時間持続した。 以上の結果は大槽内投与されたbFGFがクモ膜下出血後の脳血管攣縮に有効であることを示しており、今後脳血管に対する拡張作用のメカニズムを含め、検討を加えていく予定である。
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