本研究では、手部(一部前腕を含む)の人体モデルを作成し、気流中に留置した場合の歪みゲージを用いた応力計測及び手部模型表面にかかる圧力分布計測の2方法によって揚力、抗力を算出し、手部表面の揚力発生のメカニズムを明らかにしようとした。さらに手部の形態の違いによる揚力、抗力の変化を測定し、推進力を定量化するための基礎的データ入手を試み、以下のような結論を得た。 (1)手部の形態の違いによって揚力、抗力の発生も異なり、水泳運動中のプル動作は、進行方向に対し身体の外側から内側へ掻き込むときは、迎角を40度に保ち、親指を開いた状態で移動すること、内側から外側に移動する場合は、全指を閉じた形態で迎角を140度に保つことが揚力を最大に発揮させるのに適していることが示唆された。 (2)本研究結果より、泳者が自由水泳中に手部において発揮している正味の推進力を非拘束の状態で測定することが可能となった。今後この成果を生かして、トップスイマ-のストローク技術の解明に取り組みたい。
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