本研究は、平成6年度文部省科学研究費奨励研究(A)の助成を受け、「プログラムされた自己解体モデル」について特に生物化学的手法による検証を目的として行った。 先行研究において、単細胞生物テトラヒメナを材料として、各種環境負荷を短時間のみに与えて死滅・自己解体を誘導する方法が見出されていた。本研究ではまずこの死滅誘導方法を改良を試み、環境負荷にpH値のインパルス的変動を選択し、pH値・時間などの条件を検討した結果、死滅誘導後約30分後にほとんどすべての細胞が同時に死滅・自己解体を開始し急速に分解が進む条件を見出した。自己解体を捉える上で、培養細胞群においてこの現象が同時かつ均質に進行する条件が設定できた事の意義は大きい。 また生物化学的検証と併せて、東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻佐山弘樹氏によって、プログラムされた自己解体モデルの並列コンピューターを用いた進化シミュレーションの手法による検証研究も進められており、この理論モデルを支持する結果を得ている。本研究の生物化学的検討結果とこの理論モデルのシミュレーションの結果とを併せて、1995年5月に国際会議(International Biologically Inspired Evolutionary System)においてプログラムされた自己解体の理論モデルを発表する。 今後の計画として、(1)本年度の課題でもある遺伝子レベルでの自己解体プログラムが存在し機能している事の検証を引き続き進める、(2)赤潮など実際の地球生態系で自己解体が機能している事を明瞭に示している例を検討しこれを直接調査する事の準備を始める、(3)上記モデルシミュレーションをはじめとする自己解体モデルについての学際的な検証、などを進めていきたい。
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