本研究の目的は、海洋軟体動物タツナミガイ(Dolabella auricularia)及びアメフラシ(Aplysia kurodai)から見いだした抗菌・抗腫瘍蛋白質の作用機序と構造の解析、更には生体防御因子としての進化的位置付けを明らかにする事である。平成6年度科学研究費補助金申請に際しては、特に蛋白質(ドラベラニンA)の1次構造解析を主たる目的として設定した。 本報告書作製時における進捗状況は以下の通りである。 1.タツナミガイ卵白線cDNAライブラリーを作製し、ランダムに40クローンを単離して配列解析を行ったが、ドラベラニンAcDNAは見いだせなかった。従って、平常時のドラベラニンAmRNAのコンテントは、蛋白質のコンテントから予想されるよりも低く、一過的に発現して安定なドラベラニンAが保存される事が考えられた。配列解析したクローンの中に、その非翻訳領域がMHCmRNA非翻訳領域と相同性の高いものが存在し、それについては翻訳領域解析を行う予定である。 2.ストラテジーを予定に従って切り替え、オリゴヌクレオチドプローブを用いてスクリーニングを行った。その結果複数の陽性クローンを得ており、現在配列解析中である。 3.ドラベラニンA限定分解物のアミノ酸配列解析を行っている。ドラベラニンAには、アミノ末端が全く相同で分子量の異なる類似蛋白質、ドラベラニンEが同一生物固体中に存在する。得られたcDNAが何れの配列をコードするものであるかを判断するために必要である。 4.タツナミガイゲノムDNAライブラリーを作製した。このライブラリーを得られるドラベラニンcDNAでスクリーニングし、遺伝子構造を解析する予定である。 現時点ではドラベラニンAのアミノ末端配列と完全に一致するcDNAクローンは得られていないが、蛋白質の中間部分のアミノ酸配列情報を利用するPCRクローニング法を導入して完全長のcDNAを得るべく作業中である。
|