ヒトの脳磁場をSQUID脳磁計で計測することにより、運動視の脳内機序の解析、および暗算・思考過程における前頭葉活動の解析をおこなった。 1.運動視の脳内機序の研究 被験者の眼前においたスクリーンに運動する光点を提示しながら脳磁場と脳波を同時記録した。その結果、視覚刺激が運動を開始してから潜時約150-250msで、両側後頭部の大脳皮質が活動することが明らかになった。これは、動物実験やヒトの神経心理学的研究、ポジトロンCT法による研究などをもとに提唱されてきた運動視中枢の活動を捉えたものと考えられる。 2.暗算・思考過程における前頭葉脳磁場の研究 暗算をしたり、種々の時間空間的事象を思考する際の大脳皮質各領野の律動的脳磁場変化を、脳磁計で記録分析した。周波数分析により、暗算(簡単な引算)と特定の音楽を想定した場合などに、左右の前頭葉に5-7Hzの脳磁場の出現する被験者が見いだされた。これまで脳波記録により報告されたFmθ波に相当すると考えられるこのθ脳磁波は時間経過とともに振幅を増減し、その電流双極子を推定すると、左右大脳半球の前頭葉内に散在して発現していることが判明した。左右大脳半球間に、量的差異が見出される場合もあった。
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