新規量子スピン系物質の開発研究として、平成19年度は以下のような成果があった。 (1)擬1次元磁性体SrNi_2V_2O_8の基底状態がネール状態かスピン液体状態かについて、SrサイトをCaおよびBa置換することによりそれぞれ明確にネール状態とスピン液体状態になることを明らかにし、SrNi_2V_2O_8がネール状態とスピン液体状態の量子臨界点上にあることを明らかにした。 (2)ハニカム構造を持つβ-Mn_2V_2O_7の良質単結晶育成に成功。育成した単結晶を用いて、この物質が広い温度履歴を持つα-β構造相転移を示すこと、低温α相は20Kで反強磁性転移を示し、Mn^<2+>スピンはハニカム層内で[110]方向を向いていることを明らかにした。 (3)マリチフェロイクスで注目されているNi_3V_2O_8の単結晶をフラックス法で育成し、開放系と閉じた系での育成では結晶の形態が異なることを明らかにした。 (4)β-Cu_2V_2O_7の単結晶を育成し、この物質がネール温度26Kの擬1次元反強磁性体であること、Cu^<2+>のスピンは1次元鎖に垂直なc軸方向を向いていること、常磁性状態でも大きな磁気異方性を持つことなどを明らかにした。
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