研究課題
中国レス・古土壌試料の高精度古地磁気分析により発見した、78万年前のマツマ-ブリュンヌ地磁気逆転境界で起こった15回の極性スイングが磁化機構による疑似逆転現象ではないことを実証する岩石磁気学的実験を行った。堆積構造の乱れがなく、岩石磁気的に一様なレス堆積物に記録されていることから真の地磁気現象である可能性が高いことを示した。さらに別の場所で同じ記録を出すことができれば地磁気現象であることは確実になる。マツヤマ-ブリュンヌ境界とマイクロテクタイトの層序関係を明らかにすることが研究目的の一つであったが、マイクロテクタイトが見つからず、含有量が極めて少ないためと思われる。したがって多数回の極性スイングの存在は、マイクロテクタイトに代わるタイムマーカーとなるので、真の地磁気現象であることの実証はきわめて重要である。一方、地磁気逆転に複数の極性スイングが伴うことの普遍性を検証するために、177万年前のオルドヴァイ・サブクロン上限の逆転についても高精度古地磁気分析を行った。その結果、10回を越える極性スイングが起こったことを示すデータを中国黄土高原Baojiの2か所で得た。この結果はJournal of Geophysical Researchに公表した。この論文では195万年前のオルドヴァイ・サブクロン下限の逆転では極性スイイングが1回しか起こっていないことも示した。この事実は極性スイング発生に条件があることを示唆する。さらに、258万年前のガウス-マツヤマ境界においても検証するために、Xifengにおいて約2cm間隔という高密度測定を行ったにもかかわらず、Baojiで見つけたような多数回の小逆転(既報告)は見つからなかった。これはXifengのレス-古土壌層に堆積間隙があることを示唆していると考えている。科研費の経費についてであるが、実験が予定していたより順調に進み、キューブカプセル・薬品類等の実験用消耗品が不要となった。その経費は、燃油サーチャージ料による航空券代の高騰で不足気味となった旅費に回した。
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Journal of Geophysical Research 113
ページ: B05103, doi:10.1029/2007JB005264