研究概要 |
本研究では,光学分割剤用HPLC固定相の開発を目的とし,キラル配向性モノマーの重合物を固定化した多孔質シリカ微粒子の調整及びその光学分割能について検討した。キラル配向性モノマーとして,自己組織化するL-フェニルアラニン誘導体に着目し,様々な重合性官能基を導入した光学活性モノマーを設計した。19年度は重合性基とキラル中心(L-Phe)の間のスペーサー構造の異なる3種類のL-フェニルアラニン誘導体モノマーを重合後,"grafting to"法によってシリカ微粒子にグラフト化させた。その後,HPLCを用いて機能評価を行った。 L-フェニルアラニン誘導体モノマーの構造評価 L-フェニルアラニン誘導体モノマーのベンゼンゲルを凍結乾燥させ,得られたキセロゲルをSEM観察したところ,リボン状凝集体が確認された。また,ゲルからのキャスト膜をTEM観察したところ,三次元網目構造を形成しているのが確認された。 L-フェニルアラニン誘導体モノマーの重合及びシリカ微粒子へのグラフト化 3-メルカプトプロピルトリメトキシシランをラジカル重合(テロメリゼーション)により,3種類のモノマーからポリマーを調製し,これらのポリマーを"grafting to"法によってシリカ微粒子にグラフト化させた。DRIFT,TGA,元素分析,1^H-NMR,13^CCP/MAS,29^SiCP/MAS NMRによって,グラフト化ポリマーの評価を行った。その結果,高密度にグラフト化されているのが示唆された。 HPLC用固定相の評価 HPLCを用いて,L-フェニルアラニン誘導体ポリマーグラフト化シリカによる多環式芳香族炭化水素や多環芳香族類の同族体の分離挙動を調査したところ,市販のオクタデシル化シリカゲルよりも著しく高い選択性を示すことが明らかとなった。 今後,HPLCを用いて光学分割能の評価を行う予定である。キラル分子から誘導された固定相は光学分割剤として特異的な選択能を発揮すると期待できる。
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