研究概要 |
シリコン結晶は常圧において融点までダイヤモンド構造であることが知られているが,高圧力下でダイヤモンド構造(SiI)からベータ錫構造(SiII)へ転移し,電気的特性が大きく変化する.これは,コンタクトツールによって特定の局所に高応力を発生させるこにより実現できる.しかし,詳しい相転移条件は明らかになっていない.本研究では,複雑な応力条件下におけるシリコンの相転移クライテリオンを原子レベルで明らかにすることを目的とする.第一年度は,原子シミュレーションによってシリコンの相転移クライテリオンを評価し,得られたクライテリオンを基に有限要素法解析を行い,球状チップをシリコン基板表面に押し付けた場合のコンタクト部周辺の応力分布を評価した.原子シミュレーションでは,Tersoffポテンシャルを用い3軸応力下におけるSiI-SiII相転移クライテリオンを評価した.解析では[100]と[010]方向の応力を一定にし,[001]方向に圧縮応力を変化させ相転移応力を求めた.その結果,引張りの[100]・[010]方向応力がSiI-SiII相転移を促進することが明らかになった.ここで,ポテンシャルの信頼性を確認するために第一原理計算を用いて同様の解析を行ったが定性的には同様の結果を示した.原子シミレーションの結果を用いた有限要素法解析では,実験で観察されている表面近傍の特徴的な相転移挙動を説明することができた.
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