研究課題
性能の明示を謳う性能耐震設計では、代表性能指標としてもっぱら最大層間変形角を使っているが、扉の開閉傷害に起因する避難経路の遮断、構造躯体の修復性、内装材、外装材等非構造部材の補修性等、地震終了時に建物が被る残留変形(角)も無視しえない性能評価指標となる。本課題では、鋼構造建物は、(1)大地震下でどれぐらいの残留変形を被るのか、(2)どこまでの残留変形が許容できるか、(3)残留変形をどのように制御できるかを、明らかにすることを目的とし、特に、(A)残留変形の実態調査(B)非構造部材の損傷同定(C)残留変形制御機構の開発、に取り組む。本研究の初年度である今年度では、上記(A)〜(C)のうち下記を実施した。(A)残留変形の実態調査:1994年米国ノースリッジ地震他の鋼構造被害建物データに基づいて、残留変形の程度と、残留変形が被災後の補修・補強に及ぼした影響を分析した。エレベータが正常に作動しなかった例も報告されていたが、残留変形を詳細に測定した調査資料はほとんどないことが明らかになった。(B)非構造部材の損傷:外装材・窓ガラス等の非構造部材損傷・破壊確認実験を実施し、最大変形や残留変形と、非構造部材の損傷度、補修性、修復費用の関係を明らかにした。(C-1)残留変形の制御:形状記憶合金を座屈拘束筋かい制振部材として用いることとし、鋼構造骨組の残留変形の最小化と最大変形の最小化を図るために課すべき条件を明らかにするために、形状記憶合金がもつ復元力特性を組み込んだ一連の数値解析を実施し、必要なデータを得た。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (1件)
Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University, Annual Report No.50(In Press)