高水素貯蔵密度を有する錯体水素化物やペロブスカイト水素化物における分解-再結合反応に伴う脱水素化特性や再水素化特性、さらには添加物による反応促進効果などを系統的に評価した。得られた研究成果は以下の通りである。 1.Mg系錯体水素化物Mg(BH_4)_2では、約520Kから脱水素化反応が始まり、14.5質量%もの水素が多段反応により放出された。その脱水素化過程を詳細に調査した結果、Mg(BH_4)_2がMgB_<12>H_<12>のような中間化合物を経て、まずMgH_2まで、さらにMgまで分解することにより水素が放出されることを解明した。水素圧力-組成-等温線の測定においても、脱水素化過程における中間化合物の生成を示唆する結果が得られた。 2.脱水素化後のMg(BH_4)_2(すなわちMgとBとの混合体)の再水素化特性も調査した。その結果、673K、40MPaの水素中で、中間化合物の生成をともなって6.1質量%の水素が再水素化できることを実証した。このような中間化合物の生成は、錯体水素化物の脱水素化・再水素化特性において極めて重要であることを世界で初めて見出した。 3.Mg(BH_4)_2に対するTi系添加物の効果を評価した結果、特にTiCl_3の添加により脱水素化温度が523Kから353Kにまで劇的に低下する現象も確認した。すなわち、適正な添加物の選択によって反応促進効果が顕著に現れるといえる。 4.ペロブスカイト水素化物NaMgH_3に関しては、約6.0質量%の水素が放出されることを明らかにした。また、673Kにおける水素圧力-組成-等温線の測定からは、2段階の分解-再結合反応が進行することも確認した。
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