研究概要 |
CAM型光合成はリンゴ酸の脱炭酸酵素の違いによってリンゴ酸酵素(ME)型とホスホエノールピルビン酸キナーゼ(PCK)型の2種類に分類できる.学位論文研究においてHoangらは代表的なPCK型CAMであるパインアップルでは,ミトコンドリアにリンゴ酸・オキザロ酢酸シャトルが機能し,細胞質におけるリンゴ酸のPCKによる脱炭酸を補助するとともに,そのときに使用されるATP生成を通しても関与していることを明らかにしている.このようなパインアップルのPCK型CAMにおけるミトコンドリアの炭酸ガス固定に対する特異的な関与がその他のPCK型CAMでも普遍的に存在することを検討することが本事業の主要な課題である.そのためにPCK型CAMのサクララン(Hoya carnosa)について,ミトコンドリアにおけるリンゴ酸・オキザロ酢酸シャトルの存在を検討した.その結果,サクラランには,リンゴ酸・オキザロ酢酸シャトルではなくリンゴ酸・アスパラギン酸シャトルが機能していることが明らかになった.このことは,サクラランが低酸素処理によってCAM型光合成を特徴付ける昼間のCO2吸収抑制を消失し,活発なCO2吸収を示す結果と併せると,サクラランにおけるミトコンドリアはME型CAMに見られるリンゴ酸の直接的な脱炭酸作用によってCAM型光合成の昼間のリンゴ酸の脱炭酸に関与していることを示し,サクラランのリンゴ酸脱炭酸の形は,PCK型とME型の併用による新たな変異であることを示唆するものである.
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