研究概要 |
腸管寄生原虫赤痢アメーバは世界人口の約1%が感染している重要な感染症である。更に日本国内でも知的障害者並びに男性同性愛者に濃厚な感染を起こしている。国内での届けで件数は増加の一途をたどり、近年一般女性における感染と治療抵抗性アメーバ症例の出現が問題とされている。本研究では赤痢アメーバ原虫に選択的に存在する代謝経路の生理機能、特に病原機構における役割を解明することを通じて、本原虫感染症に対する新たな治療薬・予防薬を開発することを目的とした研究を展開している。初年度は含硫アミノ酸代謝の生理的意義を理解することを最終的なゴールとして、含硫アミノ酸代謝関連遺伝子、特にシステイン生合成経路に関与するセリンアセチル転移酵素(SAT)のアイソタイプの解析を行った。赤痢アメーバにはSAT1-SAT3の3種類のアイソタイプが存在した。SAT1-SAT2は78%同一であり、SAT1-SAT3は48%同一であった。SAT1,SAT2,SAT3のタンパク質コード領域を大腸菌発現ベクターにクローニングし大腸菌組換え体を作製するとともに、特異的抗血清の作製を行った。現在、それぞれのアイソタイプに関して基質のKm及びシステイン・シスチンなどによる活性阻害に関しての解析を行っている。同時に逆遺伝学的手法により赤痢アメーバの過剰発現体の作製を継続している。以上の研究成果は次年度の含硫アミノ酸代謝の俯瞰的理解に不可欠なツールを提供した。
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