研究課題
腸管出血性大腸菌O157Sakai株が保有する18種類のプロファージに関して、以下の解析を行った。1)大腸菌O157堺株が保有する18種類のプロファージのゲノム配列の詳細な再解析2)誘発可能なファージ検出のためのマイクロアレイ解析3)染色体から切り出されたファージゲノムのPCRによる検出4)リアルタイム定量PCRによる細胞内及びファージ粒子内に存在するファージゲノムDNAの定量5)染色体から切り出されてファージ粒子内にパッケージされると考えられたプロファージへのCp耐性遺伝子の挿入6)Cp耐性遺伝子を付加したプロファージの大腸菌K-12株への伝達能の解析以上の解析の結果、明らかな構造的欠陥を有する複数のプロファージが、ゲノムからの切り出し、複製、ファージ粒子内へのパッケージング能を有することが明らかとなった。さらに、少なくとも3種類のプロファージがK-12株に伝達されることも明らかになった。この予想外の結果は、細菌のゲノム上にしばしば存在するdefectiveなプロファージがただの残骸でなく、潜在的な水平伝達能力を持つことを初めて示したものである。同時に、この結果はゲノム上に複数存在するdefectiveなプロファージ間で、遺伝子産物のin transでの供給など、様々な相互作用があることを示すものである。さらに、これらの解析の中で、O157のStx1ファージであるSp15とStx2ファージであるSp5との間で、高頻度の組換えが生じ、新しいStx2ファージが生じることを明らかにし、その組換え部を特定した。また、大腸菌O157の病原性発現を制御すると予想される新規の調節遺伝子や、これまで報告されていない全く新しいタイプのファージの複製タンパク質と発現調節タンパク質を発見した。今後、さらに詳細な解析を行う必要があるが、いずれも重要な発見である。
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