研究概要 |
1.我々は、ラットにAngiotensin IIを慢性投与することによって誘発される心血管病変(冠動脈中膜肥厚、線維化、左心室肥大、心筋細胞肥大)に対し、臨床用量のスタチン(アトルバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン)は一部しか抑制効果が認められず、特異的Rho-kinase阻害薬であるファスジルはより強い抑制効果を示すことを明らかにした。 2.これまでのin vitro試験において、スタチンはRho/Rho-kinase経路とRac1経路の阻害作用があることが報告されている。同モデルの心臓において、臨床用量のスタチン(アトルバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン)投与群ではいずれもRho/Rho-kinaseへの抑制作用は認められず、Rac1を有意に抑制していた。一方、ファスジル投与群の心臓ではRho-kinase活性は有意に抑制されており、RhoAおよびRac1への抑制作用は認められなかった。これらの結果はスタチンが持つ多面的作用の作用機序として、Rho/Rho-kinase経路の阻害ではなく、Rac1阻害が主な作用機序である可能性を示唆している。 3.我々は上記の研究成果を第71回日本循環器学会総会・学術集会にて発表した。 4,また、心血管病に対するRho-kinase阻害薬の有用性に関する総説を、薬理学の分野では世界でもトップの医学誌の一つであるTrends in Pharmacological Sciencesに発表した。
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