平成18年度は研究の全体像を明確にすることに努めた。そのために、マレーシア及び日本の文献をもとに両国の中小企業育成政策についてのレビュウを行った。特に、平成18年にはマレーシアで今後15年に渡る同国の工業化の将来像を示した第3次工業マスタープランが策定され、その中でも中小企業が初めて一つの章にまとめられ、これまで以上にその重要性が強調されている。同国の製造業においては多国籍企業を含め、大企業の比重が高いという特徴があり、これらの企業を支える裾野産業とその中核を担う中小企業の一層の発展が望まれている。マレーシアの中小企業育成策は制度面での充実が進んでいるが、実行面での遅れが、散見される。一方、我が国の中小企業育成策は従来の画一的なものから、多様化するニーズに対応し、きめ細かな施策に変わりつつある。 文献研究と並行して、日本国内及びマレーシアで中小企業政策に関わる諸機関においてヒアリングを行った。日本では中小企業金融公庫において、中小企業向け融資の実態についてヒアリングを行い、マレーシアにおいて同様の機能を持つ中小企業銀行との比較のための情報を入手した。また、慶応藤沢イノベーションビレッジを訪問し、中小企業向けIT技術開発への貢献についてヒアリングを行った。マレーシアでは同国の中小企業開発公社(我が国の中小企業庁に相当する)、中小企業銀行及び我が国の中小企業金融公庫のアセアン統括事務所を訪れた。前2者ではこれまでの中小企業育成策拡大の経緯や詳細な中小企業育成策の実態について調査し、後者においてはマレーシアに進出した日系中小企業の経営実態についてヒアリングを行った。
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