(1)史料調査について、まずは京都大学大学文書館において、昨年度に続き、『支那留学生二関スル書類』や1913年から1925年まで各年度の留学生関係資料を閲覧し、三高における留学生の基本データを確認し、今後の研究のために基礎資料としておいた。なお、昭和期の史料調査は今後行なう予定である。また、一高同窓会関係所蔵の1930-40年代に留日中国人帰国後に編集した会誌、東京大学大学史史料室所蔵の1900〜30年代外国人留学生関係史料、国史館所蔵の清末学部および中華民国教育部時代の留日関係資料、東京大学駒場美術館所蔵の1900-40年代における第一高等学校在学の外国人留学生関係史料などを調査した。 (2)2007年9月22-23日に四国学院大学で開催された教育史学会第51回大会で、「帝国大学における留学生の入学問題-特設高等科に着目して-」を題とした口頭報告を行なった。報告では、戦前日本の官立高等教育機関に留学していた留学生を対象に、とりわけ高等学校や帝国大学への入学問題を検討し、外国人留学に対する文部省・外務省及び各教育機関と中国側の思惑やズレを考察した。今後、中国から日本への留学という移動のあり方の特質や固有性を明確化するために、朝鮮研究や台湾研究なども視野に入れておく。具体的には、受入研究者と連携して、当時の第三高等学校への朝鮮人・台湾人留学生の状況を、中国人留学生のそれとを比較しながら、東アジアにおける人の異動及びそれに伴なう「知」の交流を考察する。それを踏まえて研究成果をまとめ、学会誌に投稿する。
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