海水中の有機物の起源や動態は、懸濁態有機物や溶存態有機物毎に、それぞれ個別的に炭素安定同位体やバイオマーカーを用いて研究されてきた。本研究では、同一海水中に含まれる懸濁態有機物や溶存態有機物について、陸源性及び海洋性有機物を分子レベルで明らかにし、伊勢湾-黒潮域を対象に、それらの動態を明らかにすることを目的とする。 具体的には、濾紙上に捕集できる懸濁態有機物と共に、脱塩・濃縮が可能な溶存有機物高分子画分について、陸起源性高分子有機物、海洋性有機物を生産する動物、植物、細菌に由来する分子を区別しつつ、それらの動態を解明する。 伊勢湾は、本州中央部に位置する閉鎖性内湾で、広大な集水域を有する木曽三川を中心に陸起源性有機物が負荷される一方、富栄養化による高い基礎生産による海起源性有機物の負荷も大きい。このような伊勢湾を南下すれば、そこには世界の海洋環境のなかで、最も貧栄養海域である黒潮海域が存在している。本研究が対象とする海域は、上記研究目的達成には理想的モデル海域と言える。 9月23日〜25日、三重大学所属勢水丸の航海において、伊勢湾奥から伊勢湾口外部大王崎にいたる測線で、一般海洋観測を行い、淡水-海水混合状態や生物現存量、等を把握すると同時に懸濁態及び溶存態有機物試料を連続的に採集した。得られた試料については、炭水化物、アミノ酸・タンパク質及び蛍光・吸光物質等の全量分析を行った。
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