研究課題
媒質の異方性を境界の観測値から決定する逆問題は、数学だけでなく応用においても重要であるが、従来の数学解析に関する研究は等方性の場合に集中し、一般的な異方性の場合には成果は少ない。本研究では電磁波を記述するLame方程式やMaxwell方程式系について、媒質のより一般的な異方性を境界の有限回の観測値から決定する逆問題の一意性と安定性の研究を行った。そのためには初期値を適切に選ぶことが必要であり、初期値の条件は物理現象の対象を実験室で再現できるような場合には合理的であるが、地震波による地質探査などの逆問題では爆薬などによるDiracのデルタ関数で表される衝撃的な外力を加えて媒質を振動させるとして、初期値はゼロであるのが普通である。ゼロ初期値の場合に双曲型方程式に対する逆問題の一意性ならびに安定性を証明した。さらに、より一般的な異方性媒質における双曲型方程式系の係数を境界の観測データから決定する逆問題を考え、その準備として、異方性媒質における方程式系の逆問題に関する知見を文献や専門家によるサーベイを通じて獲得する一方で、一般的な異方性媒質におけるMaxwell方程式に対するCarleman評価の考察を行い予備的な結果を得た。同時に異方性媒質でのLame方程式に対するCarleman評価を考えた。さまざまな逆問題に関する知識を得ることが本研究を遂行するために重要であると思っており、逆問題の研究集会に参加し、インターネットによる文献検索ならびに逆問題の数学解析及び物理の関係図書を購入した。研究分担者は平成18年12月に香港で開催された工業数学における逆問題に関する国際会議に参加した。
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Chinese Annals of Mathematics, Series B 28B・1
ページ: 35-54
Journal of Inverse and Ill-Posed Problems 14・9
ページ: 891-904