地球大気中には様々な大気波動が存在するが、特に鉛直方向に伝搬可能な大気重力波はエネルギーや運動量を下層大気から高層大気に輸送することから大気大循環を駆動する重要な役割を果たしている。特に周期が5分〜1時間の短周期大気波動は運動量を効率よく情報に輸送することが示唆されている。このような短周期波動の観測には従来の気球観測の時間分解能では十分ではなく、風速や温度を優れた時間高度分解能(数分、150m)で観測することが必要である。我々の従来の研究によりMUレーダーやEARにRASSが付加され、これらが連続観測できるシステムが開発されている。本課題ではこれらを活用し日本上空や熱帯域で得られた観測データを解析する。このためノート型PCを購入した。また、国際研究動向調査、成果発表のため2006年12月にインド、ティルパティ市に出張した。 具体的内容は以下の通りである。(1)1995年8月の平穏な観測期間中のMUレーダー・RASS観測データを用いて対流圏界面付近の乱流拡散係数Kの変動を調べた。WMO定義の対流圏界面以上ではKが急激に小さくなった。これにより、大気微量成分の拡散を考える上でWMO定義の対流圏界面が、最低温度で定義される対流圏界面より良い指標となることがわかった。(2)2001年のMUレーダー・RASS観測により高度3。kmに長期間続く逆転層が観測された。逆転層内部には30分以下の周期の鉛直流変動が観測された。
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